令和6年4月施行獣医療広告制限の見直し|過去との違いやポイントを解説
令和6年4月1日から、獣医療の広告に関する規制が大きく見直されたのをご存じですか?
これは、動物医療が進歩し、飼育者がより適切な情報を得られるようにするための改正です。
従来の規制では、広告できる内容が厳しく制限されており、飼い主が十分な情報を得ることが難しいケースもありました。
しかし、今回の改正によって広告の範囲が広がり、獣医療サービスの透明性が向上することが期待されています。
本記事では、今回の獣医療広告制限の見直しについて、改正の背景や具体的な変更点、過去の規制との違いを詳しく解説します。
また、獣医師や動物病院が今後どのように対応すべきかについても考察していきます。
ぜひ最後までお読みいただき、獣医療広告について知見を深めてください。
出典:農林水産省「獣医療広告制限の見直しについて」
https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/zyui/attach/pdf/koukoku-4.pdf
獣医療広告の定義とは?
そもそも獣医療広告とはどのようなものを指すのでしょうか?
獣医療広告とみなされる要件は、農林水産省が次の3つの基準を満たす場合と定めています。
獣医療広告の3つの要件
要件 | 内容 |
---|---|
誘引性 | 飼い主を引きつけ、診療を受けるよう促す意図があること |
特定性 | 獣医師の氏名または診療施設の名称が特定可能であること |
認知性 | 一般人が認知できる状態にあること(看板、チラシ、Web広告など) |
たとえば、診療施設の名称を掲載し、一般の人が目にすることができる状態であれば、それは広告とみなされます。
逆に、内部の掲示物や既存の患者向けの案内など、外部に向けた誘引を目的としないものは広告に該当しません。
また、「これは広告ではありません」といった記載を加えたとしても、上記の3要件を満たしている場合は広告と判断されます。
そのため、獣医師や動物病院は、広告に該当するかどうかを慎重に判断する必要がありますね。
獣医療広告制限の改正背景
獣医療に関する広告制限は、動物病院や獣医師が飼い主に提供する情報を適正に管理し、不当な広告や誤解を招く表現を防ぐために設けられています。
しかし、近年、動物医療の高度化やデジタルメディアの普及により、これまでの規制が時代にそぐわなくなってきました。
人間の医療でも時代に合わせて広告制限の改正が行われ、獣医療も追随する必要が出てきたということです。
これまでの獣医療広告の問題点
過去の広告規制にはいくつかの問題点がありました。主な問題点は
- 広告できる情報の制限が厳しすぎた
- 専門的な治療の情報が伝えにくかった
- SNSなどの扱いが不明確だった
などがあげられます。
広告できる情報の制限が厳しすぎた
従来の規制では、広告可能な内容が非常に限定されており、病院名や所在地、診療時間などの基本情報のみが認められていました。
例えば、
- 費用の詳細
- 獣医師の情報
- マイクロチップ装着について
などは広告に記載できないとされてたため、飼い主が獣医療の選択肢を正しく理解することが難しいという課題がありました。
専門的な治療の情報が伝えにくかった
獣医療は年々進化し、診療の専門性も高まっています。
例えば、整形外科や腫瘍科、皮膚科などの専門分野に特化した獣医師が増え、より高度な治療を提供できるようになりました。
しかし、こうした専門性の高い診療を行う病院であっても、広告規制により「専門診療を行っている」ことを十分に伝えられない状況でした。
また、ペットの高齢化や慢性疾患の増加に伴い、飼い主の医療知識も向上し、より詳しい情報を求めるようになっています。
そのため、動物病院が適切な情報を提供し、飼い主が適切な治療を選択できるようにすることが求められていました。
SNSなどの扱いが不明確だった
インターネットの普及に伴い、多くの動物病院が動画共有サイトやSNSを活用して情報発信を行うようになりました。
しかし、これらが広告に該当するかどうかが明確でなく、規制の解釈に困るケースが多発していました。
獣医療広告規制の具体的な変更点とポイント
こうした背景から、令和6年4月に獣医療広告制限の見直しが行われることになりました。
今回の改正では、獣医療広告の内容に関して大きな変更が加えられました。
改正での最大の特徴は、獣医師への正確かつ適切な情報提供の努力義務が課せられたことです。
引用:https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/zyui/koukoku.html
この特徴に基づき、内容に関する変更点の主なポイントは2つあります。
変更内容と改正前との違いについて簡単に表にまとめました。
変更内容 | 改正前 | 改正後 |
---|---|---|
広告可能な事項の見直し | 基本情報 (病院名・住所・診療時間など)のみ | 獣医師の経歴・専門資格・診療科目・医療機器の保有なども広告可能 |
広告媒体の明確化 | 主に紙媒体 (看板・チラシ・新聞広告など) | Web広告、SNS、動画広告なども対象に |
主なポイントについて詳しく解説していきましょう。
広告可能な事項の見直し
従来の獣医療広告では、病院名や所在地、診療時間などの基本情報のみ広告できるとされ、専門的な診療内容や獣医師の資格・専門性を明示することが難しい状況でした。
今回の改正により、以下の事項が新たに広告可能となります。
- 獣医師の役職や経歴
- 獣医師の専門資格
- 診療内容全般
- 特定の診療科目の詳細
- 愛玩動物看護師の在籍
以下に、農林水産省のガイドラインに基づき、広告可能となる具体的な事項とその詳細を解説します。
獣医師の役職や経歴
改正後、獣医師の役職や経歴を広告に記載することが可能となります。
飼い主は獣医師の専門性や経験を把握しやすくなります。
記載する際には以下の点に注意が必要です。
- 正確性:事実に基づいた情報を提供し、誇張や虚偽の記載を避けること。
- 最新情報:最新の役職や経歴を反映し、古い情報を掲載しないこと。
また、研修履歴については研修の内容が獣医療に関する適切な資質かどうかの判断が難しいため記載はできないことになっています。
獣医師の専門資格
獣医師が取得している専門資格も広告可能となります。
特定の分野に精通した獣医師を飼い主が選択しやすくなるメリットがあります。
ただし、広告できる資格は農林水産大臣が指定する団体の認定資格に限られます。現在は日本獣医師会が認証した専門資格がこれにあたりますので、詳細はこちらをご参照ください。
獣医師の専門性認定要件確認機関としての「認定・専門獣医師協議会」の農林水産大臣の指定について
https://jvma-vet.jp/topics/topic_view.php?rid=5940
広告できる専門資格は今後増える可能性がありますので都度確認する必要がありますね。
また専門資格を広告する場合には具体的には、以下の点に留意してください。
- 認定資格の明示:取得している資格の正式名称と認定団体名を正確に記載すること。
- 資格の有効性:資格が有効であることを確認し、失効している場合は掲載しないこと。
診療内容全般
提供している診療内容やサービスについても広告が可能となりました。
飼い主は動物病院がどのような診療を行っているかを事前に知ることができますね。
広告する際には、以下の情報を明示することが求められます。
- 具体的な診療内容:一般診療、予防医療、緊急対応など、提供しているサービスを具体的に記載すること。
- 費用に関する情報:診療やサービスにかかる費用を明示し、飼い主が事前に理解できるようにすること。
- リスクや副作用:特定の治療や処置に伴うリスクや副作用がある場合は、それらを適切に説明すること。
狂犬病予防やマイクロチップ装着について記載する場合には、登録が必要な旨を必ず併記する必要があるため注意しましょう。
特定の診療科目の詳細
動物病院が特定の診療科目(例:皮膚科、眼科、歯科など)に特化している場合、治療内容などの情報を詳細に広告に掲載できます。
飼い主が動物の症状に適した獣医師を選ぶ際の参考とすることができます。
広告する際のポイントは以下の通りです。
- 専門科目の明示:提供している専門診療科目を具体的に記載すること。
- 担当獣医師の情報:各専門科目を担当する獣医師の名前や資格を明示し、信頼性を高めること。
また、診療科目や診療対象動物については大学の講座名にあるなど、名称が広く認められている必要がある点には注意が必要です。
愛玩動物看護師の在籍
愛玩動物看護師が国家資格になり、愛玩動物看護師が在籍していることを記載できるようになりました。
ただし、愛玩動物看護師が特定の診療行為を行なっていることについては広告してはいけないため注意してください。
広告可能事項に関する注意点まとめ
広告可能な追加事項に関して、特に今回新しく制定された事項の注意点についてまとめておきます。
- 専門資格の広告は農林水産大臣が指定する団体の認定資格に限る
- 診療内容を広告する場合は、問い合わせ先、費用、リスクなどを明示する
- 狂犬病予防やマイクロチップについて広告する場合は、登録が必要な旨を明記する
などが主な注意点です。
広告で禁止されている表現
広告に記載可能な事項が増え、自由度が増した一方で、禁止されている事項もあります。
- 虚偽・誇大広告(「絶対に治る」「どこよりも優れた治療」など)
- 誤解を招く表現(「最新医療機器で100%治療可能」など)
- 品位を損なう広告(過度に不安を煽る表現や過激な画像の使用)
- 過度な誘引広告(「今だけ特別割引」「無料診断実施中」など)
- 比較広告(「〇〇病院よりも安い」など)
獣医師や動物病院は適切で品位のある表現を用いることが求められます。
特にSNS広告では、視覚的に訴える表現が多用されるため、規制に抵触しないよう注意が必要です。
例えば「驚異的な回復率!」「劇的ビフォーアフター」といった表現は、誇張や誤解を招く可能性があるため避けるべきです。
飼い主が正確な情報を得られることを意識して、広告をする必要がありますね。
広告媒体の明確化
これまでの規制では、獣医療広告の媒体は「看板」「チラシ」「新聞・雑誌広告」などの紙媒体に限定され、WebサイトやSNSでの広告が明確に定められていませんでした。
しかし、改正後はインターネット広告も規制の対象となり、具体的には以下のような広告が管理されます。
- 動物病院の公式Webサイト
- SNS(Instagram、Facebook、Twitter など)
- リスティング広告(Google広告、Yahoo広告 など)
- 動画共有サイト(YouTubeなど)
- バナー広告
これらのWeb情報も獣医療広告要件である「誘引性」「特定性」「認知性」を満たしていれば、広告規制の対象となります。
インターネット上での情報発信の自由度が向上する一方で、広告の適正化が求められるようになりますね。
動物病院のWebサイトは広告にあたるのか
農林水産省の発表によると、動物病院のWebサイトは「広告」とはみなされないとされています。
これは、Webサイトが基本的に飼い主が自主的にアクセスする情報源であり、一方的に発信される広告とは異なるためです。
Webサイトそのものは広告に該当しませんが、その内容によっては広告とみなされ、規制の対象になることがあります。
例えば、Webサイトをリスティング広告などで宣伝する場合には、Webサイトも広告とみなされるため注意が必要です。
また同じ理由でSNSも広告にならないと思っている方もいるかもしれませんが、不特定多数に拡散して閲覧される可能性がある場合には広告になると定められています。
非公開のアカウントではなく特定性がある場合は広告の扱いになるので、SNSの運用にも気を配る必要がありますね。
違反広告を行った場合は?
新たな広告ルールが施行されることで、監督体制も強化されます。
獣医療広告のガイドラインも新たに制定され、詳しく獣医療広告について定められました。
違反広告が発覚した場合には、農林水産省や地方自治体が指導を行います。
必要に応じて是正措置を求めることになりました。
違反内容によっては、以下のような措置が取られる可能性があります。
- 行政指導(広告内容の変更・削除を求める)
- 違反が悪質な場合、業務停止命令や免許取消しなどの行政処分
農林水産省が定めたガイドラインを参考にして適正な広告運用をしていきましょう。
今後の課題と展望
今回の改正により、獣医療の広告は大幅に自由化される一方で、適正な情報提供が求められます。
獣医師や動物病院は、規制を守りながら、飼い主に正確で有益な情報を提供することが重要になります。
また、SNSの活用が進むことで、口コミや評判が病院の評価に影響を与える可能性もあります。
誤解を招かない適切な情報発信を心がけることが必要です。
さらに今後は、SNSやデジタル広告もより活発になることが予想されます。
特に、動画コンテンツを用いた情報提供が増えると考えられるため、正確かつ適切な情報発信を心がけることが必要です。
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まとめ
獣医療広告の見直しについて簡単にまとめると
- 令和6年4月から獣医療広告の規制が大きく緩和
- 獣医師の経歴・専門資格・診療内容などが広告可能に
- SNSやWeb広告も対象となり、情報発信の自由度が向上
- 誇大広告や誤解を招く表現は変わらず禁止
- 獣医師への正確かつ適切な情報提供の努力義務が課せられた
令和6年4月から施行される獣医療広告の見直しは、飼い主にとって大きなメリットがあります。
病院の専門性や提供する治療内容を正しく理解できるようになり、より適切な医療を選択しやすくなりました。
一方で、獣医師や病院側は適正な広告を行い、誤解を招かないよう注意する必要があります。
獣医療広告制限の見直しにより、Webサイトでの情報発信がより重要となっています。
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今後の動向にも注目しつつ、適切な獣医療の情報提供を行うようにしていきましょう。
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