犬のミドルエイジ期に気をつけたい体の変化と病気|今からできる健康管理のポイント

「うちの子、まだまだ元気!」
そう感じていても、気づかないうちに少しずつ体の変化が始まっているかもしれません。
犬の「ミドルエイジ期(中年期)」は、シニア期に向けて体の中がゆるやかに変化していく大切な時期です。
この時期から生活習慣を見直すことで、これから先の健康寿命をぐっと延ばすことができます。
今回はミドルエイジ期の犬に見られる体の変化や注意したい病気、そしてご家庭でできるケアのポイントを獣医師が解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、犬のミドルエイジに備えて参考にしてみてください。
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ミドルエイジ期ってどんな時期?
まずは、犬のミドルエイジ期とはどんな時期なのか知っていきましょう。
犬のミドルエイジ期は、一般的に5〜8歳ごろを指します。
まだ若々しく元気に見える時期ですが、代謝や臓器の働きがゆるやかに変化していく頃です。
たとえば、
- 筋肉量や代謝が落ちて太りやすくなる
- 毛並みが悪くなりやすくなる
- 免疫力が下がり、感染症や炎症を起こしやすくなる
- 関節や歯、内臓に負担がかかりやすくなる
こうした変化は目に見えにくく、飼い主様が気づかないうちに進むこともあります。
年をとって体の不調がはっきりと出てくる前に、早めのケアを始めることが大切です。
ミドルエイジの犬がかかりやすい主な病気
ミドルエイジ期の犬は、加齢による体の変化が少しずつ表れ始めます。
特に注意したいのが、以下のような慢性的な病気です。
心臓病(僧帽弁閉鎖不全症など)
心臓病、とくに僧帽弁閉鎖不全症は中高齢の小型犬で多く見られる病気です。
僧帽弁閉鎖不全症になると心臓の弁がしっかり閉まらなくなり、血液が逆流してしまいます。
初期は無症状のことも多く、「咳が増えた」「運動を嫌がる」などのサインが出たときには進行している場合もあります。
定期的な聴診や心臓検査が早期発見のカギです。
慢性腎臓病
犬は年齢とともに腎臓の働きが落ちていきます。
慢性腎臓病はシニア期に多くみられる病気です。
早い場合はミドルエイジ期から少しずつ進行していることも。
慢性腎臓病は完治が難しい病気ですが、早期に治療を行えば長く病気と付き合うことができます。
「水をよく飲む」「尿が多い」「食欲が落ちてきた」といった変化には注意しておきましょう。
ホルモンの病気(糖尿病・甲状腺機能低下症など)
中年期以降の犬では、ホルモンのバランスが崩れることで代謝に異常が起こることがあります。
代表的なのは糖尿病と甲状腺機能低下症です。
糖尿病は膵臓の働きが低下して血糖値が上がる病気で、
- 水をたくさん飲む
- おしっこが増える
- 体重が減る
といった症状が見られます。
一方で、甲状腺機能低下症は体を元気に保つホルモンが足りなくなる病気です。
- 元気がなくなる
- 太りやすくなる
- 毛が薄くなる
などがサインです。
どちらも早期発見・治療によってコントロールが可能です。
気になる変化があれば早めに相談しましょう。
関節疾患(変形性関節症など)
ミドルエイジ期になると、関節や筋肉にも少しずつ負担がかかってきます。
とくに体重の重い犬や、段差・階段の多い生活をしている犬では変形性関節症が起こりやすくなります。
この病気では、関節の軟骨がすり減って炎症や痛みを引き起こします。
階段を嫌がるなどの行動変化が見られたら要注意です。
体重管理や適度な運動、サプリメントなどで早めにケアを始めることで、進行を抑えることができます。
歯周病
歯周病は3歳を過ぎた頃から増えてくる口の病気で、ミドルエイジ期に悪化しやすい傾向があります。
歯の表面に付着した歯垢が歯石になり、歯ぐきの炎症や歯のぐらつき、口臭の原因になります。
放っておくと細菌が血流に乗って心臓や腎臓に影響を与えることもあります。
口臭が強くなったなどの変化があれば、早めに歯科検診を受けましょう。
日常の歯磨きやデンタルケアも、病気の進行を防ぐ大切な習慣です。
腫瘍(しこり)
腫瘍はミドルエイジ期から増えてくる病気のひとつです。
良性と悪性のどちらのタイプもあり、早期発見がその後の治療を大きく左右します。
体をなでているときに「しこり」や「皮膚の盛り上がり」を見つけた場合は、まずは動物病院でチェックを受けましょう。
特に、しこりが急に大きくなったり、出血や痛みを伴う場合は注意が必要です。
定期的な健康診断や日々のスキンシップの中で、異変を早く見つけることが大切です。

ご家庭でできる健康管理のポイント
ミドルエイジ期にかかりやすい病気を予防し、健康を長く維持するためには、日々の生活習慣を見直すことがとても大切です。
ここでは、ご家庭で気をつけたい5つのポイントをご紹介します。
1.食事の見直し
ミドルエイジ期には、栄養バランスの見直しが欠かせません。
高脂肪のフードは肥満の原因になることも。
体重維持や内臓ケアに配慮された「ミドル用」や「シニア準備期用」のフードに切り替えるのもおすすめです。
腎臓病や心臓病が見つかった場合には、専用の療法食に切り替えていく必要もあります。
2.適度な運動を続ける
若い頃のような激しい運動は不要ですが、毎日の散歩や軽い遊びはとても大切です。
筋肉や関節を維持し、肥満予防にもなります。
疲れやすくなったり、動きがぎこちないときは、無理をせず運動量を調整しましょう。
3.定期検診を年2回に
ミドルエイジ期は、年1回ではなく年2回の健康診断をおすすめします。
血液検査や尿検査、必要に応じて心臓・腹部エコーなどを組み合わせると、病気の早期発見につながります。
4.口腔ケアを習慣に
口腔ケアがますます大事になってくるのがミドルエイジ期です。
歯磨きが苦手な子は、デンタルガムやジェルなどを活用してみましょう。
毎日のケアが難しい場合でも、定期的な歯科チェックで清潔な口内環境を保ちましょう。
5.小さな変化を見逃さない
- 寝ている時間が増えた
- 散歩のスピードが落ちた
- 咳やくしゃみが増えた
- 食べ方や飲み方が変わった
- 毛艶が悪くなった
こうした変化は、病気のサインかもしれません。
「なんとなくいつもと違うな」と感じたら、早めに受診しましょう。

まとめ
犬のミドルエイジ期は、まだ元気なうちに将来の健康を守る準備ができる大切なタイミングです。
今の生活を少し見直すだけでも、病気の早期発見や進行予防につながります。
元気なうちに体を整えておくことで、シニア期をより健やかに過ごすことができます。
今のうちから、健康寿命を延ばすための準備を始めましょう。
「今のフードで大丈夫かな?」「検診ってどのくらい受けたらいいの?」
そんな疑問をお持ちの飼い主様は、ぜひこの機会に愛犬の健康を見直してみてください。
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